持ち家を選択する理由
- 家賃を払い続けることがムダに思えるから
- 落ち着きたいから
- 老後の住まいが不安だから
これは、不動産の日アンケート(公益社団法人全国宅地建物取引業協会連合会)で集計された持ち家を購入した理由のトップ3です。
この3つの理由にプラスして「持ち家を資産と考えているから」が3位になったり4位になったり。
この4つが不動の理由なようです。
購入する理由を反対側からの視点で考えてみます。
- 家賃を払い続けることをムダだと思わない
- 賃貸でも落ち着くことはできる
- 老後の住まいにそれほど不安は感じていない
こんな感じになると思います。
このような価値観があてはまるなら、持ち家になんてこだわらなくてもいいのです。
なんでみんな持ち家にこだわるのか?
なんだかこの国では、持ち家が一人前で賃貸だと半人前な風潮があります。
しかし、そのような風潮は第三者の評価です。
第三者の評価に振り回されずに、ご自身がどのように考えるか…。
これが一番大切だと思います。
自動車だって、ペットだって、ヒト以外のあらゆるモノがサブスクで利用できる「所有しない」という価値観があります。
家を持つことを「一国一城の主」なんて言っている時代ではありません。
物価の上昇で不動産も建物も価格の上昇が天井知らずとはいえ、住宅ローンの金利はまだまだ低い状態が続いています。
持ち家の購入価格自体は高いけれど、毎月支払う住宅ローンの返済額は家賃並み、いや…家賃以下の水準です。
今日、トメ先生がお伝えしたいのは、賃貸が下で持ち家が上なんて考え方は前時代的な考え方であって、賃貸に住むのも、持ち家に住むのも、個人の価値観で決めたらいいということです。
きっと、今日の解説を読んだ後は「賃貸か…持ち家か…」のモヤモヤをスッキリできるかもしれません。
3LDKや4LDKの家が必要な期間
賃貸と持ち家の違いで分かりやすいポイントというと、部屋や収納の数の違いではないでしょうか。
広めの部屋に多い、3LDKや4LDKの間取りとなると家賃も高くなりがちです。
その、3LDKや4LDKの広めの間取りが必要な期間について考えてみます。
家族が増えて、大人と子供がが同じ部屋で生活できる時期と、家族ごとに部屋が必要な時期があります。
子供たちが成長して「さすがにパパやママと同じ部屋で寝起きするのはいかがなものか」という年齢になった頃、部屋数が必要になってきます。
このように考えると、3LDKや4LDKの広めの間取りが必要なのは子供が巣立つまでの期間だということがわかります。
子供が小学校に入学した頃に自分の部屋を持たせたとしたら、22歳で大学を卒業して一人暮らしをはじめるまでの15~16年間。
これが3LDKや4LDKのような、広めの間取りが必要な期間というわけです。
そこで3LDKや4LDKの広めの間取りとなると、家賃も2LDKの部屋より高くなる。
高額になる家賃を支払うのなら、部屋も収納も充実していそうな持ち家も視野に入ってきます。
このようなことから、家賃の支払いがムダだから持ち家をという理由にたどりつきます。
持ち家を購入して35年の住宅ローンを組む。
でも、3LDKにしても、4LDKにしても、広めの家が必要なのは20年に満たない期間です。
住宅ローンの借入期間のうち、4LDKの家が必要なのは半分の期間だけで、残りの半分は大きすぎるマイホームで過ごすことになるのです。
子供たちと過ごす期間のみ4LDKの賃貸住宅に住んで、夫婦二人になったら二人での生活にちょうどいい大きさの賃貸住宅に住む、という考え方があってもいいと思うのです。
家賃相場はその時の経済市況によるので確実性はありませんが、4LDKが必要な15~16年の期間だけ高めの家賃を負担する、それ以外の期間はラクラク生活ができるくらいの家賃の負担をする。
こういった生活のほうがメリットが多いという考え方も間違っていないのです。
■■■もう他人の評価はきにしない!■■■
ダイバーシティな世の中はファッションだって音楽だって趣味だって、あらゆるものが個人の価値観を重視します。
住宅だって一緒です!
「落ち着きたい…」抽象的すぎてよくわからない理由
落ち着きたいから持ち家…。
はっきりいって抽象的すぎて意味がよくわかりません。
「持ち家で落ち着いた生活がしたい…」の「落ち着きたい」なのか、「落ち着いた」オトナになりたい「落ち着きたい」なのか、トメ先生にはよくわからない理由です。
オトナだから持ち家…結婚したから持ち家…。
なんでオトナだと持ち家なの?なんで結婚したら持ち家なの?
その理由を掘り下げる必要があると思います。
オトナだから…っていうのは一種のステータスなんでしょうね。
しかし、そういうものは個人の価値観なので、人によって正解が異なります。
オトナのステータスは家以外でも感じることができると思います。
持ち家は資産…という考え方
3500万円くらいの住宅ローンを借りて、毎月9万円くらいの返済で持ち家に住むケース。
そして、毎月9万円の家賃を支払って賃貸住宅に住むケースで考えてみます。
あくまでも、これから申し上げることはひとつの考え方ですからね。
持ち家なら35年後には3500万円の試算となる。
正確には、建物の経年劣化や不動産相場の変化などがあるので、2000万円になることもあれば、4000万円になることもありますが。
住宅ローンの支払いが終われば、まとまった資産になっているのが持ち家です。
でも、資産になるから持ち家という考え方は少々短絡的な気がします。
そもそも、我が家に資産としての持ち家が必要なのか…ということを考えたうえで選択するべきだと思います。
今から35年後に、我が家には3500万円の資産が必要なのかを考えてみるべきです。
たとえ賃貸住宅で毎月9万円の家賃を支払っていても、仕事をしているならば年金は準備できるわけです。
さきほども出てきた、子供が巣立つまでの16年間は貯蓄もままならないかもしれないけれど、子供が巣立ったあとから貯蓄をはじめればいいのです。
今や人生100年時代、企業の定年も60歳から70歳くらいですよね。
仮に50歳になったあたりで、子供たちが巣立ったとしたら、まだまだ10年から20年はサラリーマンとして仕事ができるのです。
引き続き厚生年金を納めるわけですし、勤務先からは毎月お給料が支給されます。
企業の定年が55歳で、平均寿命が60歳代だった時代であれば、定年後の残りの人生が10年もないわけで。
そうなると、50歳になってから老後の準備なんていっていたら、間に合いません。
年をとってからも働くのはイヤだけれど、今の日本では子供たちが巣立ってからの資産形成も遅くはないような気がします。
トメ先生が耳にする持ち家を購入する理由
子供が生まれてモノが増えて収納がいっぱいなんです。
子供が部屋を走り回るようになって、隣の部屋に気をつかいたくない。
トメ先生が対応するお客様によくある持ち家を購入する理由です。
どちらにも共通しているのは、今の生活の不満を解消したいということ。
トメ先生の勤務先は建売住宅が主力商品なので「マイホームを購入して、今の生活の不満を解消しましょう!」なんてアドバイスしますが、今の生活の不満を解消できるのが持ち家とは限りません。
賃貸でも今の生活の不満は解消できることもあるでしょう。
だって、持ち家で収納が増えたからといっても、かなりの確率で収納が増えた分だけモノが増えます。
結局、また収納が足りなくなるのです。
だから、家の購入を検討する前に、まずはモノを減らすことを考えるべきなのです。
【収納とマイホーム】収納はあればあるだけモノが増える…当たり前を解説しました。
隣の部屋に気をつかいたくないというご家族だって、隣の部屋との間を壁が仕切っているから音が届くわけです。
戸建ての賃貸住宅ならお隣との間には空間があるのですから、気をつかうことも少なくなるのではないでしょうか。
住み方の問題ですよね。
トメ先生が実感する持ち家の現実…
マイホームは金食い虫…資産化、落ち着きどころではない
最後にトメ先生が持ち家を購入して17年経過しての感想をお伝えしましょう。
マイホームなんて、購入後しばらくの間は金食い虫です。お金ばかりかかります。
入居したばかりの頃は、すべてが新しいから気分も爽快でウキウキが続きますが、3年…4年…5年と時間が経過すれば落ちない汚れが発生し、床や壁にキズがついて、あの頃のウキウキ感がウソのようです。
購入当初は35年の住宅ローンなんて、繰り上げ返済して早く終わりにしてやるぜっ!なんて意気込みますけれど。
繰上げ返済なんて、よほどストイックに家計が管理できる精神力の強いご家族でなければ現実的ではありません。
【あわせて読みたい】トメ先生が持ち家を購入して17年…今思うことをつづった問題作
でも、トメ先生が住んでいるのは地方都市ですからね。
東京や大阪などの大都市のように、住みたいエリアに賃貸住宅が当たり前のように存在しているわけではないのです。
地方では住む場所に、オシャレなエリアもオシャレじゃないエリアもないのです。
そういった事情があるから持ち家、ということになる方も多いのが地方都市の特徴ですよね。
だからこそ、地方在住で持ち家購入が避けられない方は、ご自身の価値観で住宅を選んだほうがいいです。
トメ先生は、すっごく高い不動産を購入しましたが、自分の価値観で「ここでなら持ち家がほしい!」って場所で購入しました。
あれから17年。
「住宅ローンの支払いたいへんだなぁ…ほんとに金食い虫…」と思うことはありますが、購入したことを後悔したことはありません。
価格は上がる一方だけれど金利は上がらないという視点
不動産価格が上がり…建物価格が上がり…
トメ先生のところは夫婦共働きなので、休日がヒマなトメ先生がスーパーへの買い物係です。
我が家は毎日スーパーに行く時間がないので、一度に一週間分をまとめて買い物します。
レジでお会計の時に感じるのは、数年前より2割から3割くらい支払う額が多くなっていることです。
スーパーの商品同様に不動産の価格が上がっています。
そして、数えきれないほどの部材の集合体である住宅。
住宅を構成するそれぞれの部材の価格が上がっているので、必然的に住宅価格も高くなります。
しかし、住宅ローンの返済額は以前ほど高くなっているわけではありません。
実は、同様のことが家賃にもあてはまるかもしれません。
まぁ、物価に合わせて多少高くなっている場合もあるかもしれませんが、住宅ローンの返済額や家賃相場が数年前と比べて3割高くなっているという話はあまり聞きません。
物価ほど家賃が上昇しない理由
これはなぜでしょうか…。
トメ先生の不動産業界在籍24年の経験から思うのは、どちらも金融機関からの借入がベースになっているからです。
住宅ローンの返済額がわかりやすいですよね。
ズバリ、購入した人が借りた住宅ローンの返済額です。
では、賃貸の家賃は…?というと。
大家さんがアパートを建てたり、購入する時に利用したローンがベースになっているのではないかという考えです。
トメ先生のような庶民には縁遠い話をひとつ。
アパートを持つようなお大尽になると、ある程度の借金があったほうが相続に有利だったりするのです。
だから、アパートを建てるにしても、購入するにしても、ポンと支払える現金を持っているのにローンを組んでマイナスの資産を作るのです。
そのような借り入れへの返済額がベースになっているのが家賃だと考えたのです。
物価も金利も上げると日本人にはショックが大きすぎる
なぜ住宅ローンや大家さんのローンがベースになっていると、返済額や家賃は物価ほど高くならないのか。
それは、住宅ローンや大家さんのローンを金融機関が貸し出す時の金利が低金利なまま上がっていないからです。
「日銀が長期金利の変動幅を0.25%から0.5%に拡大した」などというニュースが大々的に報じられました。
この影響で、長期金利が基準になっているフラット35や固定期間選択型の住宅ローンの金利は微増しました。
微増といっても、毎月の返済額でいったら数百円増える程度の変化です。
政府のエライ人たちにしてみたら、日本も世界の各国のように、物価の上昇に合わせて金利も上げたいところなのです。
しかし、私達日本人はここ数十年のあいだゼロ金利やマイナス金利といわれる、低金利による生活に身体がなじんでしまっています。
低価格が低価格を呼ぶ、デフレスパイラルの世の中に慣れてしまっています。
国内の経済のことを考えるて物価も上げて、金利も上げて、なんてことをすると私達庶民へのショックが大きすぎてしまう。
それを政府のエライ人たちが考慮しているのです。
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日銀のエライ人もしばらくはマイナス金利と考えています
2023年11月30日の読売新聞朝刊に、日銀の安達誠司審議委員の記者会見でのコメントが掲載されていました。
現在の大規模な金融緩和策の柱であるマイナス金利政策については「(賃金と物価の好環境が)実現する状況になるまで、解除は難しいというのが個人的な考えだ」と指摘したというものです。
これが日銀ではなく、安達審議委員の個人的な考え…というところがひっかかるところですが、このような記事が出ることを考えても、しばらくは低金利の状態が続くという見解なのでしょう。
結果、賃貸も持ち家もどちらも間違いではない
ここまで「賃貸でいいのです!」という視点から解説してきました。
モノを所有するということにこだわらない現代的な考え方を活かせる賃貸。
オシャレなエリアとか、オシャレじゃないエリアとか、そんなことを言っていられない地域では持ち家。
生活する場所や、個人がもつ価値観で住宅のカタチも選択できるのが、今の時代の住宅の選び方。
たしかに「持ち家が上で賃貸が下」なんて言っているのは、お年を召した方のほうが多いかもしれません。
「え~、そんな場所で持ち家買ったの?」とか。
「そ…そんな高い家賃払ってんの?」とか。
そういう感想は第三者の感想です。
みなさんは、第三者のために家賃を払うのではないし、第三者のために持ち家を購入するのではないのです。
みなさんが、みなさんの価値観で満足できたら、それでいいのです。
住宅ってそういうものだと思います。
実は建売住宅の相談も受け付けてくれるそうです→中立公正な「注文住宅の相談窓口」