不動産業者とハウスメーカーでは接客内容が違う
地元の分譲事業者が分譲地の建物が完成しはじめたので、お披露目を兼ねて現地見学会を開催することがありますよね。
お客様は完成した建物がどんな仕様なのか確認するために見学会に足を運ぶと思います。
しかし、ハウスメーカーが展開する総合住宅展示場などにあるモデルハウスで受ける営業さんの対応を想定していると、面食らうことがあるかもしれません。
ハウスメーカーではスタッフが、モデルハウスを流ちょうに説明してくれます。
併せて会社の特徴やこだわり、そのハウスメーカーではどのようなことができるか、じっくり説明してくれます。
かたや、分譲事業者の現地見学会。
営業さんの後について完成した建物の見学をするのですが営業さんからは、
「建物は自由にご覧になってください。気になることがあれば聞いてください。」程度の声がけがあるだけ。
ハウスメーカーでのこってりな説明に胃もたれ気味のお客様であれば、気楽に見学できていいかもしれません。
しかし建物について詳しく知りたいと思って来場したお客様には物足りないかもしれないのです。
そしてひととおりセルフ見学が終わると、リビングに展示されたソファーに着座させられます。
自社の建物についてはたいして説明しませんが、お客様の情報はたくさん聞いてきます。
分譲事業者の営業さんは、対応すべきお客様か、対応しなくていいお客様かを初回の面談時に白黒つけます。
わかりやすくお伝えすると、このお客様は住宅ローンが借り入れできる方か否かを判断するための商談をするのです。
建売住宅を購入するお客様の検討期間は、およそ1ヶ月から2ヶ月といわれます。
検討期間中に建物を見学して、ご両親に説明し、悩み悩んで決断する。
決断したはいいけれど、住宅ローンが借り入れできないと、お客様の苦労も水の泡。
同時にお客様の対応をした営業さんの1ヶ月も骨折り損のくたびれ儲けに終わるのです。
毎月売上ノルマを課せられている営業さん。
1年は12ヶ月ありますが、無駄にできる期間は1ヶ月すらありません。
だから、ハウスメーカーでモデルハウスの見学を想像して分譲地の見学に行くと違和感を覚えるというお話です。
実際に先日、私が分譲地で目にした事例を解説します。
久しぶりに分譲地見学会の応援に行ってきた
新型コロナウイルスも感染拡大が落ち着いてきて、感染法上の取り扱いが5月にはインフルエンザと同じ5類に移行するニュースなども耳にするようになりました。
そこで私の勤務先でも数年ぶりとなる分譲地の現地見学会を開催してみました。
今の勤務先に入社して22年。
入社後の4年間は営業でしたが、その後の18年間はお客様向けの販売ツールを作ったり、営業さん向けに勉強会を開催したりする仕事に就いているため、普段は営業ではないのですが久しぶりのイベントに来場者が見込まれるということ、現場監督兼応援スタッフとして参加してきました。
開催の1月最終となる週末は10年に一度といわれる大寒波の影響で、エスキモーのような恰好をしていないと屋外で待機できないほどの寒さ。
しかし、イベント告知が功を奏し一日中大忙しとなるくらいたくさんのお客様に来場していただきました。
営業さんが商談で忙しくイベントの現地に入れない時間が多いため、私も昔取った杵柄で15組くらいのお客様をご案内。
食事をとる時間もないくらい大忙しでしたが、お客様の反応を見ていると私の営業トークもまだまだサビついていないようで安心しました。
普段から、営業さんむけの勉強ツールとして、分譲地に建っている建売住宅の解説動画を作成して社内に発信しています。
建物を担当した設計さんに、どのような点をこだわったのかとか、どんなご家族を想定して設計したのかなどをインタビューして営業さんに共有するのが私の仕事。
イベントを開催していた分譲地の解説動画を年末に作ったばかりだったこともあり、ぱっと見では気づけないような建物のこだわりにお客様も感心してくれていました。
土間収納を広くとって、リビングにアクセスするアプローチと直接キッチンにアクセスできる二つのアプローチがある玄関と、二階に通じる階段の中段をスキップフロアにした仕様が特徴の建物をご案内している時でした。
自分の商談が落ち着いた営業さんが「失礼します」と言って建物に入ってきました。
手が空いたというのでお客様対応できるというのです。
このまま建物の説明が一区切りするまで私が対応し、そのあとバトンタッチのほうがいいのでは…と思いましたが、このお客様もイベント後は営業さんが対応するので、ここでバトンタッチでもいいかと思い「では、担当の営業が戻りましたので、引き継がせていただきますね」とお客様にお伝えしバトンタッチしました。
そこでビックリが発生したのです。
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おいおいマジかと思うほどのあっさり対応
私がリビングを出て玄関で靴を履いている時でした。
玄関とリビングを仕切る引き戸の向こうで営業さんとお客様のやりとりが聞こえてきます。
実はこの営業さん、昨年、国内でも指折りに数える大手の分譲事業者から転職してきた人。
聞き耳を立てるつもりはありませんが、自然に聞こえてくるやりとりに興味津々な私でした。
「建物はお好きにご覧になってください。気になることがあればお聞きください。」
それで建物についての会話はひと段落でした。
さっきまで私が特徴を説明し、お客様が質問してきて、質問に私が返答して。
この営業さんには、そのようなやりとりはまったくありませんでした。
ふたたび私は駐車場整理のポジションについて、数台のお客様の自動車を誘導。
それにしても寒いので、駐車場が落ち着いたのを見計らいストーブの前に一時避難。
ストーブの前からは、先ほどの建物のリビングの様子が見えるので、どんな様子かうかがってみると…。
私が建物を出て5分、すでにお客様はソファーに着座して引き継いだ営業さんと話している様子。
お客様は建物を見に来たんだよなぁ…。
どんな仕様の建物で…どんな特徴があって…最近話題のあの装備はついているのか…。
そういのを知りたくて来場しているのだと思うのです。
それなのに見学はわずか5分足らず、おそらくソファーに座って、希望のエリアは…予算は…お仕事は…と、住宅ローンの借り入れができそうな方か、難しそうな方かを判断するための商談がメインの見学になっているのです。
お客様はあれで満足できるのか、見学に来てよかったって思えるのだろうかと疑問に感じました。
分譲事業者の営業に建物の詳細説明を期待してはいけない
ここからは私の偏見もありますので、ご承知のうえでご覧ください。
たいていの分譲事業者の営業さんは建物についての説明はこの程度かもしれません。
冒頭に触れた私が共有している建物の解説動画にもその姿勢は現れています。
100名弱の営業さんが在籍する会社なのですが、動画の平均再生回数は3回程度。
学校を卒業して新卒社員として入社してきた頃は、建物の特徴や仕様についてドラえもんのひみつ道具の暗記パンがほしくなるほど頭に詰め込んだはずなのに、入社して5年もすると新仕様が発表されても特徴を覚えようともしなくなります。
では、お客様はそのような営業さんより優位に立つにはどうしたらいいのか。
それは簡単です。
特にこれまでハウスメーカーを見学してきた方なら、なお簡単です。
ハウスメーカーの営業さんってお客様も大切に扱うし、商品も大切に扱います。
建物の見学時には大切な商品に傷や汚れが付かないように白い手袋を渡されませんか?
このあたりからジャブを打ってみましょうか。
見学用の白い手袋でジャブ
あの手袋、ある程度の規模で事業展開している分譲事業者は用意しています。
用意しているけれど使いません。
お客様に渡すのがめんどくさいし、建物には興味がないからです。
そこで優位に立つためのジャブの一言。
「手袋付けずに素手で見学していいんですか?」
これで建物への意識の高さではお客様のほうが上に立てます。
営業さんは内心「うぅぅ…」と思っているはずです。
建物の汚れでジャブ
そして建物の見学をはじめたら次の一言です。
「やっぱり見学する方が多いと、建物汚れるんですね。」
玄関には砂利や砂、階段の隅にはほこり、窓ガラスはくもり気味。
分譲事業者は完成物件がたくさんあるので、営業さんは会社からも建物を清掃するように指示されています。
でも、清掃しません。
めんどくさいからです。
清掃を頑張っても、この建物を自分が契約できるとは限らないからです。
清掃が甘い点に軽くジャブを入れましょう。
営業さんは内心「ぐぬぅぅぅぅぅ…」となっているはずです。
最後の一手でポジション確立
最後の一手はどうしましょう。
営業さんが苦手な建物の仕様や性能についての質問でダメ押ししましょうか。
難しいことを聞く必要はありません。
「断熱材が入っているのは、外壁のほかにどこですか?床は?天井は?」
多くの営業さんはそんなことすら把握していません。
覚えるのがめんどくさいからです。
大事なのは断熱性能ではなくて、お客様が住宅ローンを借り入れできるかどうかだからです。
こうなると営業さんの常套句「確認してのちほどお伝えします」と言ってくるはずです。
ハウスメーカー出身者や設計経験ありの営業さんには注意
しかしこの手が通用しない営業さんもいます。
・ハウスメーカーから転職してきた営業さん
・設計の仕事を経験したことがある営業さん
・建物のことをしっかり学んでいる営業さん
こういう方はすらすら回答するでしょうから、特に三つ目のジャブはかわされてしまうと思います。
まぁまぁ営業さんと意地を張り合って、ケンカしに行くわけではないでしょうから参考程度で…。
分譲事業者の現地見学会は心の準備が必要
いかがだったでしょうか?
分譲事業者の現地見学会は場所が分譲地になっただけで、営業所に訪問した場合と商談内容は変わらないということがご理解いただけましたでしょうか。
たしかに住宅購入には住宅ローンについてしっかり考えることも大切です。
でも、営業さん主導になりすぎると、住宅ローンありきになってしまって住宅購入の本質を見失うことがあると思います。
なぜ住宅購入するのか…。
住宅を購入して実現したいことは…。
勢いで進んでしまっている時に、原点にもどるというか落ち着いて立ち返る場所を作っておきましょう。
住宅購入の決断要素は数が多すぎて混乱してしまいがちです。
そういう時こそ基本に立ち返る。
住宅購入もスポーツも似ているところがあります。
今週も分譲地の現地見学会にお出かけになる予定があるお客様。
心の準備はいいですか?
総合住宅展示場での接客を想像するとギャップがありますよ。
しっかり対策してすてきな住宅探しををお楽しみください。
注文住宅の見学と建売住宅の見学の違いがわかったならいつもより気持ちに余裕をもって見学できるかも、
準備が整ったかたはこちらもどうぞ。