規格型住宅は大ヒットしない
ダイワハウスが規格型の商品を売り出していますね。
スーツ姿の松坂桃李さんがスマホで会話しながら森の中を歩いているCMをご覧になったことがある方もいるでしょう。
松坂桃李さんのカッコよさに気をひかれ「なんのCMだった?」という方もいるかもしれません。
あのCM、ダイワハウスの規格型住宅を紹介しているCMなのです。念のため…。
不動産業界で20年以上働いているトメ先生。
トメ先生の経験では、規格型の住宅って大ヒットしません。
トメ先生の勤務先は建売住宅を主力商品として販売する会社です。
そんでもって、その中の1割くらいが注文住宅の販売という内容の会社です。
ダイワハウスと比べたら小さな小さな規模のトメ先生の勤務先。
トメ先生の勤務先でも毎年、毎年「規格型住宅の販売促進」規格が打ち出されます。
昨年もたいした効果はなかったのに今年も…。
定期的に規格型住宅の受注をしたがる期間があります。
トメ先生が入社してから毎年やってますから、かれこれ20年以上やってます。
でも、一度ですら「大成功した!」といえる年はありません。
注文住宅と建売住宅のハイブリッドタイプの規格型住宅。
ダイワハウスはお金をかけてテレビCMまでながしているけれど、はたしてうまくいくのか?
今日は規格型住宅について打ち出す側の「会社側の思惑」と販売する側の「営業さんの思惑」がうまくかみ合わない事情を解説します。
今回は、お得な情報…役に立つ情報…ってわけではありません。
なにかが勉強になるというより、トメ先生があのCMを見て思ったことを書き連ねてみました。
「へぇ~そうなんだ~」くらいな感じでお目通しください。
【レディ・メイド・ハウジングが気になる方におススメの記事】
ダイワハウスで規格型のレディ・メイド・ハウジングを宣伝中。
トメ先生に思い浮かんだのは、ダイワハウスが販売したいのは規格型住宅ではなく建売住宅なのではないかという仮説。
なるほどね~…な記事はこちらです。
【あわせてどうぞ】
注文住宅と建売住宅の違いを解説した、わかりやすい記事がたくさんありますよね。
そこで、トメ先生は少々違った角度から注文と建売について解説。
ダイワハウスの「Ready Made Housing」ってなに?
注文住宅と建売住宅のいいとこどりと松坂桃李さんがCMで森の中をどろんこスーツ姿で電話しているCM。
桃李さんは言います。
「二者択一じゃなかった」
「間違った場所でぐるぐる回っていただけ」
「敵か味方か」
「パンかライスか」
「ウニかイクラか」
「キャビアかフォアグラ」
どちらか一方ではなく、その間のちょうどいい感じのところって言ってます。
ダイワハウスが打ち出している注文住宅と建売住宅のいいとこどりの商品。
注文住宅と建売住宅の中間…いわゆる規格型住宅です。
ダイワハウスのホームページで確認してみたところ、
どうやら、分譲地で建売住宅として建っている建物を見学して、その建物をベースに建築するタイプ。
基本的に間取りの変更はできず、キッチンやトイレなどの設備メーカーを選択できたり、クロスや床などのデザインを選択することができるというものだと思います。
世の中では「規格型」「セミオーダー」などと呼ばれる商品。
さて、超大手のダイワハウス。
会社と営業さんの足並みは揃っているのでしょうか。
提供元(ダイワハウス)側の意図
プランが落ち着くまでに時間がかかる注文住宅
ハウスメーカーの注文住宅と聞くと、フルオーダーですべてが自由に決められる住宅が頭に浮かびます。
人生で一番高い買い物なのだから、建物のすべてを自分の思うがままカタチにしたい。
そのようなマイホームの理想形でもあるのが注文住宅。
契約から引き渡しまでのフローは、とにかく長くて複雑で手間がかかります。
建物を基礎から屋根までオーダーするのだから致し方ないことです。
建物のプランを設計さんとお客様で打ち合わせる、設計さんはそのプランをCADで図面にする。
そして、次の打合せの結果、さらにプランが変更になる、再びCADで図面を作り直す。
さらに次の打合せで、またまたプランが変更になる…。
図面を作るだけではありません。
設備が変更になれば設備メーカーから見積もりを入手して請負金額も変更しなければならない。
こんな感じでプランが落ち着くまでにはとにかく時間ばかりかかるのです。
このような感じですからハウスメーカーの設計さんは、そのプランが落ち着くまでの間はお客様と図面の対応につきっきりになるわけです。
設計さんだけではありません。
打合せのたびに担当の営業さんは打合せのに同席するメーカーもあることでしょう。
営業さんが打合せに時間を費やす。
実はこれ、メーカーにとっては理想的ではないことです。
なぜなら、人件費がかかっているからです。
営業さんは、販売するのが仕事ですから打ち合わせに同席する時間を営業活動に充ててほしい。
これがメーカー側の気持ちだと思います。
設計さんだって1回か2回くらいの打合せでプランを終了して、次のお客様のプランに取り掛かってほしい。
これがメーカーの本音だと思います。
規格型なら設計さんが時間をとられない?
そこで、考えられたのが規格型住宅です。
規格型住宅は、ここにきて登場したものではなく昔からあります。
トメ先生だって営業をしていた20年前に、規格型住宅を取り扱いました。
建物の間取りは変更できない、設備のメーカーやクロスや建具のデザインは変更が可能。
建物の壁の位置を変更しないので、よほどのことがない限り設計さんは必要ありません。
そうです、設備のメーカーやクロスの品番をお客様はメニューから選んで、営業さんは記録をして設計さんに引き継ぐだけ。
メーカーによっては、変更になった設備の見積もり取得まで営業さんが対応するところもあるでしょう。
これならば、設計さんはお客様の打合せにつきっきりになることがないので、メーカーとしても安心です。
追加工事の採算性がメーカーの目的
注文住宅と比べて手間をかけない規格型住宅ですが、建売住宅とは決定的に異なる点があります。
みなさんおわかりのとおり、これから建築するということです。
これから建築するということは、完成してしまった建売住宅とは違って、追加工事に期待できるという点がメーカーにとっての旨味です。
建売住宅なら普通のキッチンだけれど、規格型なら食洗機を追加できるとか。
建売住宅なら普通の床だけれど、規格型ならピアノも置ける床に補強が追加できるとか。
建売住宅ならペアガラスの窓だけれど、規格型なら3重ガラスのサッシに変更できるとか。
追加したりグレードを上げた時に生じる差額。
設計スタッフの対応時間を減らしているのに、完成物件では生じない追加工事による利益が期待できる。
これがハウスメーカーが規格型に力を入れる理由といえます。
営業さんの思惑はメーカー側とズレがあるかも
影響があるのは建売住宅を取り扱った営業さん
ハウスメーカーの営業さんなので、注文住宅の打合せなどのフローに慣れている営業さんは問題ないと思います。
ここ数年、飯田グループホールディングスやケイアイスター不動産などの建売住宅に押されていたハウスメーカーは、ハウスメーカーとしてのメンツをかなぐり捨てて建売住宅を販売しています。
ハウスメーカーが建売の販売を開始してから入社している営業さんの中には、注文住宅を取り扱ったことがない営業さんもいるかもしれません。
大きな影響があるのは、こういった営業さんです。
どんな影響があるのかって、建売住宅は注文住宅に比べて手離れがいいのです。
だって、完成した商品を売るのだから、契約から引き渡しまでの間に打合せが存在しない。
契約の後は住宅ローンの手続きと登記の準備をすれば引渡しになってしまうのです。
(実際には建物の取り扱い説明とか、火災保険の手続きなど細かい手続きがありますが…)
ハウスメーカーや不動産業者の営業さんは、契約すればしただけインセンティブ(歩合)がお給料に上乗せされます。
建売住宅は注文住宅と比べて少ない手間と労力をで収入にありつける。
これは営業さんにとって心の底から「楽」だと感じることなのです。
特にやっかいなのは注文を取り扱っていた営業さん
会社の方針でハウスメーカーなのに建売住宅を販売することになった。
これまで、ずーっと注文住宅を取り扱ってきたけれど、建売住宅を担当することになる営業さんもいることでしょう。
トメ先生がやっかいだと感じるのは、このような営業さんです。
最低な例えを許してもらえるならば、注文住宅を味わった営業さんにとって建売住宅は麻薬のようなものといえます。
担当する建売住宅の数が、1棟や2棟というはじめのうちは問題ないのです。
確かに手離れのいい建売住宅は楽だと感じます。
ところが、建売住宅を取り扱う数が3棟から4棟、4棟から5棟と実績を重ねていくと…。
「完成物件マジで楽だわ~」って鳥肌が立つくらい感動するようになってしまうのです。
かかる手間と時間は注文住宅とは雲泥の差だということを感じはじめてしまい「注文住宅メンドくせ~」って思うようになってしまいます。
こうなると、この営業さんは「住宅の楽さのドラッグ」にキマってしまった状態です。
なかなか、面倒な注文住宅に気持ちが戻せません。
もう、タチの悪い麻薬の依存症と一緒です。
メーカーが販売したいのも建売住宅なのかもしれない
今回の解説を書いていて気が付いたような気がします。
ダイワハウスは、日本を代表するハウスメーカーのひとつ。
もしかしたら、営業さんの中には建売住宅依存症になっている方がいることは、百も承知なのかもしれません。
2023年から2024年にかけて、日本全国で建売住宅の販売は思わしくないわけですよ。
ヘタしたら飯田グループホールディングスの建売住宅の倍額くらいの販売価格になるハウスメーカーの建売住宅。
ハウスメーカーの建売住宅だからって売れ行き好調というわけではないと思うんですよ。
規格型住宅のReady Made Houjingを入り口にして、お客様には建売住宅を購入してもらう。
そういう作戦だったりしませんかね?
あくまでもトメ先生の勝手な解釈ですけれどね。
建売住宅より、少しだけ自由にできる規格型住宅。
土地なしのお客様で、注文住宅だと予算がオーバーしてしまう。
そういうお客様を対象に、商談は規格型でスタート。
分譲地の建売住宅でゴールする。
うーん…そんな感じのカスタマージャーニー。
トメ先生のあたまに構築できましたよ。
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そういう事情を解説してみました。
【情報収集の前にやるべきこととは?】
住宅探しが長期間に及びそうな「完璧主義」「心が開けない」方は情報収集の前にコレをしておかないとエンドレスの住宅探しになるかもしれません。