契約は理由がなくても解約できる
「住宅の契約をしてみたものの、不安になってしまったので契約をやめたい」
契約して自宅に戻った後、たいていの方は不安になります。
「契約してしまった不動産…解約ってできるのだろうか?」
解約のルール…契約書にしっかり書かれていましたよね?
どんなルールだったか覚えていますか?
契約はとくに理由がなくても解約することが可能です。
ただし、条件が二つあります。
- 契約相手が履行に着手する前であること
- 買主から申し出る場合は、手付金を放棄すること
「えぇ~!!手付金返ってこないの?」
この点が不満ですよね。
でも残念ながら、手付金は返ってきません。
なぜなら、契約では売主と買主がフィフティフィフティの対等な関係だからです。
契約書にもしっかり書かれています。
「えぇ~!!だって契約の時には書類が多すぎて何がなんやらだったし…」
そんな声が聞こえてきそうです。
お気持ち、よ~くわかります。
でも、甘い!!
それは甘い考え方です。
今回は「契約の上では売主も買主も対等の関係」をテーマに解説します。
不動産業界で24年も仕事をしているトメ先生は思います。
住宅探し中のみなさんは、購入候補の物件の情報を知るのもいいけれど、契約のルールも知っておいたほうがいいです。
契約では売主も買主も立場はフラット
ある契約で手付金の額を100万円と定めた場合。
買主から解約を申し出る場合は、この100万円をあきらめる。
こうすることで買主は100万円を損することになります。
契約上、売主と買主は対等です。
売主から解約したい…って場合はどうでしょう。
売主から解約を申し出る場合は、100万円を返金する。
これだけでは、売主は痛くもかゆくもありません。
だって、預かっていた手付金を買主に返すだけですからね。
だから、預かっていた手付金を返金して、さらに100万円を買主に支払うことで、売主にも100万円の損が生じる。
いかがでしょう。
解約を申し出ると売主も買主も手付金の分だけ損をする。
売主と買主が対等な条件になっているのがおわかりでしょうか。
まぁ、売主が不動産業者さんの場合、契約での取り決めは存在するものの、売主から解約を申し出ることはまずないですけれどね。
契約時の書類が多すぎる問題への対策
売主と買主が対等な関係なのはわかった。
でも、契約時に確認する書類の量、とんでもない量です。
あれだけの量の取り決めを、契約手続きの数時間で把握して理解して承諾する。
三度の飯よりも法律が好き…という方でもない限り、契約手続きは苦痛でしかありません。
みなさんの担当になる営業さんでさえ、契約書類の内容を理解できていないという方も少なくありません。
そこで、トメ先生がおススメする方法はコレ。
「事前に契約書類を確認させてもらう」ということです。
それなりの規模の不動産業者さんが売主の物件は、いつでも契約ができるように、あらかじめ契約書類が用意されているはずです。
契約締結の1週間くらい前に契約書類を預かって内容を確認させてもらいましょう。
契約書類は渡せません…という業者さん対策あります
きっと中にはいると思います。
「契約書類を事前にお渡しすることはできません」っていう不動産業者さん。
そんな不動産業者さんでも大丈夫。
Google先生で「全国宅地建物取引業保証協会 重要事項説明書」と検索すると、検索の第1位に多くの不動産業者さんが使っているであろうフォーマットが表示されます。
フォーマットですから、もちろん物件の細かい概要は入力されていません。
でも、肝心の約款はしっかり表示されています。
念のため…。
「約款(やっかん)」とは、契約の取り決めが文章で表示されているものです。
「第1条」とか「第10条第1項」のようにまとめられています。
自動車の契約やスマホの契約では「時間がある時に読んでおいてください」って言われる、あの部分です。
不動産は高額ですからね、勝手にとんでもないことを書き込まれて「あとで読んでおいてください」なんてことんなったらシャレになりませんからね。
不動産の売買契約の多くは、簡単な契約と違って、営業さんと一緒に時間をかけてしっかり読み合わせしますよ。
そのフォーマットのリンクを共有しておきます。
以下のリンクから「全国宅地建物取引業保証協会版」の契約書と重要事項説明を、Excelデータで閲覧可能です。
公益社団法人 全国宅地建物取引業保証協会 版重要事項説明書と売買契約書
https://zentaku.or.jp/member/wp-content/uploads/2016/08/d_05.xls
全日本不動産協会の契約書類は所属会員でないフォーマットが開けず、閲覧できませんでした。
でも、言いまわしが異なりますが、基本で取り決める内容に大きな違いはないと思うので、上記のフォーマットを参考にしていいと思います。
あと、不動産業者さんが独自のフォーマットで契約書類を作っている場合も同様です。
取り決める内容は宅地建物取引業で決まっているので、大きな違いはないと思います。
事前に契約書類を提供してもらうためのセリフ
正式な契約書類には約款の他にも「特約事項」「特約条項」が記載されることがあります。
「特約事項」や「特約条項」とは、取引対象となる不動産に特有の取り決めです。
例えば「庭には立派な御影石がありますが、これは取り除かずにそのまま置いていきます。
不要な場合は買主さんが、ご自身の負担で取り除いてくださいね」とか…。
「敷地の西側の境界線で、先祖代々隣の方ともめています。取引するのに境界線が決まっていたほうがいいと思って、相談に行きましたが互いに譲らずで問題が解消していません。
…ということで、西側の境界線は不明のまま引き渡しますよ。
この件で将来、問題が生じた場合は買主さんが対応してくださいね。」
こういった、物件固有の問題は契約書類のフォーマットに表記されていません。
そこで、売主さんと買主さんで話し合って取り決めておくのです。
案件によっては、契約書とは別に「覚書」とか「念書」のような別の書類を作って、売主さんと買主さんが署名することもあります。
だから、できることなら「特約事項」や「特約条項」が記入されている、完成した契約書類のを事前に確認したいものです。
「大量の文章が書かれた、書類を説明されても、素人の私達は簡単に理解できません。
契約の上では売主も買主も対等なのですから、
契約書類の内容についての理解度も対等であるべきだと思います。
事前に契約書類を確認させてもらえませんか?」
「前もって書類をお渡しすることはできません」という不動産業者さんに伝えられたら、気持ちよさそうなセリフができあがりましたので、よろしければご活用ください。
不動産業者さんは「特約事項」や「特約条項」を記入することによって、まとまりかけた商談がまとまらなくなるのを避けたいから書類を渡してくれないのかもしれません。
買主さんが「ん?チョットまって…これ、私の負担なんですか?」なんて言い出したら、ふたたび条件合わせの作業をしなければならない。
でも、買主さんにとっては重要なことですからね、遠慮なく書類の事前確認をさせてもらうべきです。
売主さんと買主さんは対等ですからね
それでも、いらっしゃいます。
解約するのに手付金を返してほしいっていうお客様。
「手付金を返していただけないでしょうか?」
「手付金を返してください」
「手付金、返してよ」
「手付金、返せよこのヤロウ」
ひどい時には、契約したご本人ではなく、お父様やお母様から連絡がくることもあります。
書類が多いから…。
文章が多いから…。
短時間で理解はできないから…。
それでも、書類に署名して印鑑まで押したのです。
不動産の取引はチビッ子のお店屋さんごっこではありませんからね。
住宅ローンの返済額も大切です。
物件の近隣施設も見逃せません。
建物の断熱性能も忘れてはいけません。
でも、同じくらい契約書に書かれた内容って重要です。
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