住宅購入を決断できなくさせるオバケ「百件見た郎」

これだ!という物件はすでにあったかもしれない

たくさん物件を見学しているのに気に入った物件に出会えない。
もう3年も探しているのに気に入った物件に出会えない。
土地も建物も価格も、すべての条件が気に入った物件があっちにもこっちにもあったらこんな苦労はしないのに。

予想していた以上に物件探しに時間がかかっている人は
不動産オバケの「百件見た郎」があらわれた可能性がある。

「百件見た郎」が現れると住宅購入を判断する最低ラインを上げるといういたずらをする。
見た郎が出るとマイホーム購入に時間がかかるらしいのだ。

桃太郎電鉄でいうキングボンビーのような存在の「百件見た郎」。
「百件見た郎」からのがれるには、今回の判断が次回の判断の最低ラインになることを理解するといい。

「百件見た郎」の存在を知っておくのは不動産探しの初期であればあるほどいい。
今まさに「百件見た郎」がくっついてしまっている人も、
今日のトメ先生の解説を読んだら、見た郎がどこかにいってくれるかもしれない。

何年も不動産探しをしていて、そろそろきちんと決断しなきゃって思っている方や、
これから不動産探しをはじめようとしている方にはおススメの解説かもしれない。

たくさん物件を見すぎて判断基準がわからなくなっているのも「百件見た郎」のしわざかもしれない。

「百件見た郎」伝説

不動産業界の裏側でささやかれる「百件見た郎」伝説。
オバケの「百件見た郎」が出ると、何十件、何百件と物件を見学しても決断できなくなるという。

トメ先生も20年ほど前は営業だった。
マイホーム購入を夢見るお客様のお相手をしている時代があった。
その頃の話。

はじめて商談するお客様には名前や年齢などの個人情報を聞く。
併せて、いつ頃までに購入したいのかとか、いつ頃から住宅探しをしているのか。
ということを聞き取ったりするのだが、

たま~にいるのが「もう3年探している」とか「5年もいろんな物件を見ている」という方。
心の中で「俺の業界経験より長い…」つぶやく。

ひととおり、お客様からいろんな話を伺って実際の商品を見学ということでご案内する。
「これだけ庭があれば家庭菜園できそう!」
「わ~!リビング広くて明るい」
「家事の動線も使いやすいね~」

ずいぶんと物件を気に入った様子。
営業の大原則で、見学後は感想をうかがう。
「いい!すてき!」と大絶賛の感想。

そうなると、
「ではご契約ということで、すすめられそうですか?」と確認する。

これもテストクロージングという営業の大原則。
このまま契約で…となれば御の字だし、
いやチョット…となれば、その「チョット」の原因を把握する。 

そして、その「チョット」は考え方や代替案で解消できるものか検討するのだ。
考え方や代替案で解消できない場合、次のご案内はその「チョット」の条件が整った商品を案内する。

20組のご家族に1組くらいの割合でいるのが、
いくら「チョット」の条件が整った商品を見学しても決断には至らない方。

もちろんトメ先生もお相手したことがある。
物件を気に入っていて、見送る要素はないのに決断はできない。
こんなに気に入ってくれているのなら決断すればいいのに決断しない。

営業は商談が終わった後は上司に商談内容の報告をする時間がある。
はじめて、こういうお客様の対応をした後の報告の時、上司に言われたのだ。

上司:「「百件見た郎」かもしんないね~」

トメ先生:「ひゃっ…ひゃっけんみたろう?

      なんすかそれ?三年寝太郎なら知ってますけど。」

上司:「「百件見た郎」は百件も二百件も物件を見たって決断ができないお客様のことだよ」

トメ先生:「妖怪とかおばけみたいに言いますね」

上司:「まぁオレ達からみたら、妖怪とかおばけみたいなもんだよね」

水木しげる先生の妖怪図鑑にも載らないオバケ…百件見た郎

今から20年チョイ前の話になる。
トメ先生がはじめて出くわした「百件見た郎」。

先日、このお客様が当時住んでいた平屋一軒家タイプのアパートの前を通りかかった。
アパート前の信号が赤信号になったので信号待ちをしていた。
「懐かしいなぁ」なんて思いながら視線をパーンすると…。

あのお客様だと思しき人が玄関から出てきた。

信号が青になったので、その場から移動したのだが。
「「百件見た郎」…まだいるんか…。」と思った。

他にもこんな「百件見た郎」が

トメ先生が営業をしていた20年前はインターネットが世の中に出まわりはじめた頃。
不動産の情報発信も現代とは大きく異なり、新聞に折り込んだチラシが主流の時代。

月に2回ほどチラシを作って新聞に折り込む。
チラシには物件情報が多ければ多いほど問い合わせが来る確率が上がる。

チラシの作成当番になると、20代前半で若かったこともあり、
地域の不動産業者さんを四六時中訪問し油を売り続けて、
チラシに掲載するための物件情報を収集するのが楽しかった。

物件情報を収集していると、
中には「この物件も持っていく?」と市場にでは出まわっていない秘密の物件を紹介してもらえることがある。

もちろん契約するのが一番なのだけれど、まずはチラシを作らなければ上司に怒られる。
だから「チラシ掲載してもいいっすか?」と必ず確認する。

こういったシークレット物件は、
たいてい「ゴメン。チラシは勘弁して。案内はいくらでもしてくれていいから。」と掲載は断られる。

このようにして苦労しながら(油を売っているのだが…)物件情報を収集して、チラシを折り込むとお客様から問い合わせがある。

Googleマップもない時代なので、
お客様が物件の場所を知りたい時には営業所に来社して物件資料や地図を入手する必要がある。

こういう時に別のタイプの「百件見た郎」が出るのだ。
とにかく物件をよく知っている。
どんなに最新情報でも既に知っている物件なのだ。

なんと、チラシの掲載を断られている、前述したシークレット物件でさえも「百件見た郎」は知っている。
「百件見た郎」は不動産業者よりも物件に詳しいのだ。

本職の不動産営業より物件情報に詳しい「百件見た郎」の図

営業としての仕事なので、来社時にお客様の情報を聞き取ると、やっぱり…。
探しはじめて数年が経過しているのだという。

もうこうなったら、こういうお客様は「百件見た郎」。
今後のフォローは真剣にしないのだが。
不動産業者も驚くほど物件情報を知っているという能力者なのを活用させてもらうことも。

チラシ作りの当番になった時、掲載物件のネタ切れで困ったときに連絡をとってシークレット物件を教えてもらったり、
担当している別のお客様が検討するエリアが物件の少ないエリアで、ご案内する物件が出てこない時に連絡をとってシークレット物件を教えてもらたり。
繁華街にある無料案内所さながらの活用をさせてもらった。

もちろん、シークレット物件は別のお客様が喜んで契約してくださったというのは言うまでもないが。
こういう時に限って言われる
「えぇ~!あの物件、売っちゃたの~!ほしかったのにぃ」

これが「百件見た郎」。

「百件見た郎」が出る条件

マイホーム購入を検討するうえで物件の見学は欠かせないものだ。
ひとつだけ物件を見学して決断してしまうのもコワい。

見学する。

営業から感想を求められる。

感想を伝える。

営業からテストクロージングがある。

今回は見送る判断をする。

ココ!

ある物件を見学してポジティブな感想を持てた場合は「百件見た郎」が心のスキマに入り込む可能性がある。
見学した物件が点数にして、あと3ポイントとか5ポイント足りないような時。

ようするに、ホントにあとチョットで決断できそうな物件の時。
「百件見た郎」がやってくるのだ。

このような物件に出会ってしまうと、
いままで持っていた不動産購入を決断する最低ラインが上がってしまう。

仮にAという物件で決断の一歩手前くらいまで気持ちが盛り上がったとする。
すると次回、物件Bを見学し、決断を検討したりする時には、
前回見送った物件Aを基準にいろいろ考えるようになるのだ。

そしてまた見送る。
すると物件Bと次の物件を比較して検討するようになる。

「百件見た郎」があらわれると直前に検討した物件が購入の最低条件になる

繰り返すが、新たに紹介された物件にポジティブな感想を持つことが条件になる。

物件Aより物件B。

物件Bより物件C。

物件Cと次の物件…。

という具合に決断の最低ラインが上がっていくのだ。
あまりにこれを繰り返すと「百件見た郎」がやってくる。

すると。
次の物件を見た時に「これに比べたら物件Aのほうがいいなぁ」というような
判断基準にパルプンテの呪文でもかけられたような状態になる。

パルプンテというのはロールプレイングゲーム「ドラゴンクエスト」に出てくる呪文。
「ドラゴンクエスト」にはバトルのための呪文や、ゲーム進行をラクにするために呪文がたくさんある。

UnsplashDmitry Vechorkoが撮影した写真

パルプンテを使うとプレイヤーが覚えている呪文のいずれかが発動するという
何が出るのかわからない、効果がランダムの呪文なのだ。

やっとたどり着いた超強敵とのバトル。
敵の攻撃も一筋縄ではなく、攻撃を受けすぎてプレイヤーのライフが風前のともし火のような状態で
「ヒットポイント全回復してくれっ!」と祈りを込めてパルプンテの呪文を唱える。

効果がランダムなのでカギを開ける呪文を唱えたり、宝箱の中身を教えてくれる呪文が発動してしまったりするのだ。

まぁこんな時にパルプンテを使おうと思うほうがどうかしているのだが。
話を元に戻そう。

「百件見た郎」があらわれると、物件購入の判断はできなくなる。
たしかに物件を少しでも多く見学するのも考え方としてはある。

しかし、見学して判断を見送る場合、
この見送る理由を次の物件に活かすということが必要なのだ。

「百件見た郎」は悩む家族ってステキ…と思っている

不動産の営業をしていると、中には明らかに不動産購入の決断に酔ってしまっている人もいる。
これも「百件見た郎」がいたずらしているのだ。

「百件見た郎」は、不動産購入であと一歩のところで悩んでいる家族をステキって思うようだ。
不動産探しをはじめた頃には、あんなに小さかったお子さんも気が付けばそろそろ小学生…。
なんて方もいると思う。
こうなると、わが子と一緒に「百件見た郎」を育てているようなものだ。

コンビニのおにぎりやユニクロの衣類のように、サッと手に取って購入できるなら住宅探しにこんなに苦労しない。
人生で一番高額な買い物のマイホーム。
今日買った家は使いにくいから、来週は新しい家を買いなおそう。

なんてわけにもいかない。

だから現れる「百件見た郎」。
最後は「百件見た郎」を退治する方法を解説する。

「百件見た郎」を退治する方法

次のような対応を取り入れれば「百件見た郎」は現れにくくなる。
今まさに「百件見た郎」にヤラれてしまっている人も心がければ改善するかもしれない。

①決断を見送る時はネガティブ要素を自己認識

②ネガティブ要素を覆せるポジティブ要素がどのようなものか把握

③次も同じネガティブ要素があった場合は見送るのか確認

①決断を見送る時にはネガティブ要素を自己認識

これは我が家にとって、どのようなことがネガティブ要素となるのか認識するための作業。
ポジティブ要素も大切だが、住宅購入を決断したいならネガティブ要素が重要。

決断に悩んでいる私ってステキ…という方や、
この悩んでいる時間がなんともいえないんだよなぁ…ハイボールお代わり!という方は
いくらでもポジティブ要素を出して次回に臨むといい。

「百件見た郎」は去らないけれど。

②ネガティブ要素を覆せるポジティブ要素がどのようなものか把握

たとえば駐車スペースが1台分不足するというネガティブ要素があったとする。
でも、この物件には駐車スペースがある分、陽あたりが期待できる。

駐車スペースと陽あたりを比較するのだ。
「陽があたっても駐車スペースは増えない」と考察したり。
「駐車スペースは不足するけれど近くの月極駐車場をを使えば…」とか。

おまけに月極駐車場の利用料と、
駐車スペースが不足しない庭の広い区画を購入した場合の住宅ローンの返済額を比較してみるとか。

月極駐車場を利用したら住宅ローンの返済額で折り合えるとしたら。
では、この物件を購入できるのか…。

そういうのを把握することが重要だ。

③次の物件に同じもネガティブ要素があった場合は見送るのか確認

今回の物件で見送ることになったネガティブ要素を把握する。
今後、今回と同じネガティブ要素の物件は候補に挙げないのなら、
ネガティブ要素を持つ物件を避ければいいのだから物件探しがスムーズになる。

「いや…それでも見るだけ見てみようよ。」となることもあるだろう。
そういう時には惰性で見に行ってはダメ。

ネガティブ要素があるのになんで見に行くのか、その理由をしっかり考察しよう。
ネガティブ要素を覆すことができるポジティブ要素があるかもしれないから…。

そう、だったらそのポジティブ要素をしっかり把握しておくのだ。

「百件見た郎」が来ないように自分で自分の外堀を埋める

「百件見た郎」を退治する方法。

実は不動産営業がお客様対応をする時の手段だ。
不動産営業はお客様に決断させようとしているのではない。

お客様に断る理由を吐き出させているのだ。
陽あたりが悪いことを理由に決断を見送るお客様に、
次は陽あたりの悪い物件を避けて案内する。

そしたら今度はウォークインクローゼットがないからイヤだと決断を見送れば、
次は陽あたりが悪い物件を避けてウォークインクローゼットがある物件を案内する。

まだ続く。
今度は小学校区が気に入らないので決断を見送る。

次は陽あたりが悪い物件を避けて、
ウォークインクローゼットがあって、
検討の余地がある小学校区の物件を案内する。

このようにして、徐々にお客様の外堀を受けていく。
最後は断る要素がなくなるという算段だ。

「百件見た郎」があらわれないようにするには、
外堀を埋める作業はご自身で行えばいいということ。

決断を悩むのが気持ちいいという人でなければ外堀を埋められるはず。
家族で「あぁでもない、こうでもない」と話し合ってみるといい。

もしかしたら、理解に苦しむ屁理屈が出ることがあるだろう。
その屁理屈はご家族が言っているのではく「百件見た郎」が言わせているのだ。
すでにご家族の誰かのもとに「百件見た郎」がいるのかもしれない。

マイホーム探しをはじめたばかりの方は
ぜひ希望の条件に近い物件情報を見つけてご家族で話し合ってみてはいかがだろう。
「百件見た郎」はご家族間でしっかりコミュニケーションがとれている環境が苦手だ。
物件情報が探しやすそうなサイトをご紹介するのでよろしければどうぞ。

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