ごく稀に手付金返金の返金に応じる不動産業者もある?
人生で一番高額となる買い物、マイホーム。
一念発起して契約してみたのはいいけれど、本当に買ってよかったんだろうかと悩んだり、実際に購入したのは自分なのに、ここで生活するわけではない知人や親族からネガティブな意見ばかり言われて自己嫌悪に陥る。
結果、購入したことを後悔し解約しようと考える。
しかし、多くの不動産の契約では解約を認めていはいるけれど、解約する場合は手付金を放棄しなければならない。
たしか、契約書の読み合わせの時に担当者が言っていた。
それを承諾した証拠として署名してハンコも押した。
でも解約したい。
おまけに手付金も返してほしい。
それはお客様のわがままというもの、不動産の契約を解約する場合手付金は返ってきません。
でも、解約に応じたうえに手付金も返金する。
そういう対応をする不動産業者もなくはない。
私のこれまでの経験をふまえて解説しましょう。
警察24時で見る職務質問
パトカーの前を走る自動車のブレーキランプが切れている。
二車線道路の赤信号でパトカーと並ばないように信号待ち。
するとお巡りさん「声、かけてみましょうか…」と言ってパトカーと降りて運転手に声をかける。
で、必ず「危険物がないか確認させてくださ~い」なんて言って車内をチェックする。
すると、ダッシュボードの中のガムのケースから薬物が出てきたり、
「運転手さんお酒の匂いしますよ」となって飲酒運転が発覚したり。
きっかけは小さな問題だったのに、調べてみたら人生を狂わせるような一大事となる。
不動産業者さんにとってのお巡りさんは都道府県庁の建築指導課。
不動産業者にとっての職務質問は建築指導課からの呼び出し。
実際にあったお話をドキュメンタリーでお伝えします。
お客様の相談窓口 県庁建築指導課
担当営業とお客様は意気投合で人間関係をしっかり構築
そのお客様は結婚したばかりの二十歳台のご夫婦。
アパートの家賃も住宅ローンの月々の返済額もそれほど変わらない。
結婚もしたことだし…と建売住宅を購入しました。
担当の営業さんはご夫婦と年齢の近い二十歳台。
商談段階から意気投合して人間関係をばっちり構築し契約に至ったのですが。
契約して数日…。
若いお二人の大きな買い物は、ボクシングのジャブが徐々に体力を奪うように、
時が経つとともに、お二人の心に徐々に不安というジャブが効きはじめていました。
お二人は「一度解約して、もう一度じっくり考えたい」
そう考えるようになり、解約を申し出ることにしました。
しかしお二人にとって解約を申し出にくい理由がありました。
担当の営業さんの大ファンとなっていたため、
「あんなにお世話になったのに解約なんてしてしまったら、営業さんに申し訳ない」
という気持ちが大きく、営業さんに解約を申し出る勇気が出ませんでした。
な…なんで建築指導課に行くのよ~!
営業さんに解約を申し出る勇気がないお二人がとった行動は県庁の建築指導課への相談でした。
県庁の建築指導課は不動産免許の窓口で、高額の不動産取引で一般消費者が困らないよう目を見張っている機関でもあります。
お二人は建築指導課に行って「■■■不動産で家を買ったんですが…不安になってしまって解約したいんです」と相談しました。
相談を受けた職員からは「■■■不動産さんは解約に応じてくれないのですか?」と聞かれ、
お二人は「そういうわけではなくて…」と窓口に相談に来た経緯を職員に打ち明けたそうです。
職員の見解は今のところ不動産業者に非はなく、宅地建物取引業法に則った取引をしているというものでした。
解約をする、しないについて建築指導課で関与することはできない。
そして手付金を返金するよう不動産業者に指導することもできないという見解を述べたそうです。
しかし、建築指導課は受けた相談は案件として処理するため、当事者双方の話を聞きます。
そして不動産業者には建築指導課から呼び出されることになるのです。
建築指導課から連絡を受けて、あのお客様が解約を考えていることを初めて知った不動産業者。
今のところ法令違反は見当たらないが、お客様から問い合わせを受けてから契約に至るまでの経緯を説明するようにという出頭命令が下されました。
不動産業者も建築指導課が何をしている機関なのか知っていますので、これまでの対応に法令違反がないか振り返ります。
売買契約書や重要事項説明書に違反や事実と異なる内容がかかれていないかチェックします。
ここでコンプライアンス違反があれば営業停止になったり宅建業免許取り消しになったりする可能性があるわけですから、ミスを見逃すわけにはいかないのです。
契約時にお客様から受領した手付金は5万円。
これも返してほしいと言っているらしい。
不動産業者はすぐに判断しました。
即日で解約に応じよう。
そして、手付金もお返ししよう。
5万円は若いお二人にとっては大きな金額。
でもそのわずか5万円を返すか、返さないかの問答で建築指導課の心証を悪くするくらいならさっさと返金してしまおうということで、すぐに解約手続きして、その場で5万円を返金しました。
お客様は担当の営業さんに平謝りだったそうです。
手付金を返金したことで店長さんに何度もお礼を言ってお帰りになったそうです。
なんだかいい話じゃん…と思いますが大変なのはここからでした。
契約書類一式を持参して建築指導課を訪問して弁解…いや経緯の説明。
すでに解約処理をして手付金も返金したことを職員に伝えると、
「えっ?返しちゃったの?」
建築指導課の呼び出しにビビったことで早ワザの解約&返金に職員も唖然としていたそうです。
唖然とする職員を前に、お客様の問い合わせから契約に至るまでの経緯を説明し呼び出しのミッションは完了。
と思ったのは甘かった。
数日後、建築指導課から連絡が。
「先日はご苦労様でした。伺ったお話の内容で宅建業法違反の可能性があります。間違いがあるといけませんのでもう一度建築指導課までお越しいただけますか?」
文字数の関係があるのでここから先を記すと一大大河ドキュメンタリーとなってしまうので省力しますが「そ…そんなこと?」という、言われてみれば確かに宅建業法違反が確認され、不動産業者の担当者は建築指導課と国土交通省と顧問弁護士の間を2ヶ月にわたっていったり来たりし、問題処理にあたったそうです。
そうです。
その担当者が私なんですけどね。
不動産の契約はオトナとオトナの約束ごとです
ここに記載した事例は稀なケースですので、どの会社でも誰でも同じような対応が受けられると考えるのは大間違いです。
まず、手付金の金額を5万円とか1万円で対応する不動産業者が稀であること。
100万円とか200万円と手付金で対応する不動産業者なら対応しないと思います。
なぜなら、建売住宅を1棟販売して400万円の利益が出るとしたら、解約に応じて手付金を放棄してもらって100万円が計上できて、次の週末には別のお客様がその物件を契約してくれたら。
そうです。
予定より多く利益がでるのですから、返金は難しいと思います。
しかし、不動産業者との取引の困りごとがあった場合、県庁の建築指導課や国土交通省などの免許権者。
消費者相談窓口や弁護士などの第三者への相談は、事態を動かす効果があると思います。
「動かす効果」と表現したのは、第三者への相談の結果、良い方向に動く場合と悪い方向に動く場合があるからです。
不動産業者に法令違反がないのであれば、不動産業者は頑張るでしょうから悪い方向に動くことが多いです。
ひるがえって不動産業者に法令違反がある、または法令違反があるかもしれない場合は、大きな問題なる前に穏便に済ませたいのが不動産業者の気持ちですから良い方向に動くかもしれません。
いずれにしても不動産の契約はオトナとオトナの約束事がベースとなった取引です。
契約上では売主と買主はフィフティフィフティの関係。
最近は、モンスターカスタマーなんて言葉があるくらいですから、いつでもお客様が守られるという風潮も改善傾向にあります。
お客様も守られるけれど、不動産業者も守られる世の中になりはじめています。
みなさまのマイホーム購入が素敵なものになりますよう、本日もお祈り申し上げております。